セクピスパロについて
寿たらこ先生の「SEX PISTOLS」というBL漫画の設定をお借りしています。

平たく説明すると、3割ほどの人間が猿以外の動物から進化した「斑類」という人種です。

詳しくはwikiあたりで調べてみてください。
とても萌える漫画なので興味をもたれた方はぜひご一読を。
私は委員長とマクシミリアンが好き。


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この後の話に出てくる単語に軽く説明をつけておきます。
・魂現(こんげん)…それぞれの特徴を持った動物の魂が、肉体より外側にあらあれるさま、睡眠中など意識のない時や極度の興奮状態であらわれやすい。
・替え魂(かえだま)…魂現をコントロールして別の動物になりきること。

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簡単な自分の脳内設定↓

真斗→犬の半重種、狼犬 真臣も狼犬(ハイパーセント)
トキヤ→蛇の中間種と猫の軽種のあいのこ、蛇の中間種、ヤマカガシ
音也→柴犬となにかのミックス、犬の中間種
那月→ヒグマ、熊の重種
レン→ベンガルヤマネコ、猫の半重種、母親の華蓮が人魚 
翔→ポメラニアン 犬の軽種
HAYATO→トキヤとは双子設定。猫の中間種、蛇の性質も受け継いでいる




致死量の恋のはなし

「あなたの身体は温かいですね」
うっとりと目を細めながら身体を撫でる手はどこまでも優しい。
うとうととしかけていた俺は半分魂現が見えてしまっていたのだろう、視界の端でふわりと動く灰色の尻尾が見えた。
先ほどまでの行為の名残で仄かに温かい室温。軽い疲労感となんとも言えない充足感で今にも深淵に飲み込まれそうになっていた意識は一ノ瀬の言葉で急速に浮上していく。
「私は蛇の目ですから、体温が低いんです。まあ半分は猫なんですが」
だからでしょうか、体温が高いあなたの側は心地がいいです。と彼が目を細めて笑う。
「ああ、お前は確か蛇の目だったか」
よほど訓練したのか、一ノ瀬は寝ているときも魂現を見せることはなかった。もちろん、身体を重ねている最中ですら。そのうえ、替え魂でぱっと見猫に見せているという念の入れようだ。だから、彼が蛇の目だということを忘れてしまうことすらあった。
「そういえば、お前の魂現を見たことがなかったな」
「わざわざ見せるようなものでもないでしょう?」
それに、蛇なんて気持ち悪くはないですか? と彼は顔を曇らせる。
自分としては、虫は嫌いだが、蛇などの爬虫類は苦手ではない。それに、
「蛇は神様の遣いと言われているではないか」
「それは白蛇などの一部の蛇ですよ。蛇は蛇でも、私は毒蛇ですよ」
ヤマカガシという蛇を知っていますか? 割とよく見かける種類なのですが、あれです。と彼が言うが、残念ながら蛇の種類にはあまり詳しくはない。
「それに、蛇の目は、冷酷、非道、低体温、というのが世間一般の傾向らしいですよ」
どれも当たっていますね、と至極おかしいとでも言いたげに彼がくつくつと喉で笑う。
「そうか? お前は優しいだろう?」
「私が優しいのはあなたにだけですよ」
そうだろうか。何がおかしいのか、更に笑みを深くした彼にそう反論しようと口を開けば、おとがいを引き寄せられて、キスをひとつ。唇を食むような口づけは、先ほどまでの行為に比べたらなんとももどかしい。唇の感触を楽しむように何度もそれを繰り返されて、時折、濡れた舌先が唇の縁をなぞっては、その先へと侵入せずまま戻ってゆく。吐き出される吐息が敏感になった唇に触れてこそばゆい。
話がはぐらかされたと気がついたのは、すっかり息があがって、何も言えなくなってしまった後だった。
「相変わらずお前はキスが好きだな」
何か文句を言おうと口を開いたものの、蕩けるようなキスでぼんやりと霞がかった思考では気のきいた言葉ひとつ言えず、咄嗟に口にしたのはそんなつまらない言葉だった。
「知ってましたか? 蛇は舌が一番敏感なんです」
一ノ瀬がぺろりと舌を出して笑う。そんな些細な仕草すら妙に様になっていて、つい見惚れてしまう。そうして、あなただって舐めるのが好きでしょう? 犬ですからね、と舌を出したまま顔を近づけてぺろりと唇を舐め上げられてしまった。唇を薄らと開けば、その舌が無遠慮に咥内へ侵入し、思う様に蹂躙してゆく。先ほどよりも深いキスに再び思考が蕩けてゆく。舌を差し出してざらつく舌を何度も絡め合わせて、吐息さえも貪るようにキスをする。息が苦しいのに、口を離すことすら惜しい。
はぁはぁと胸が上下する頃にようやく唇が離れると、一ノ瀬が不意に思い出したように、鼻先が触れ合うほどの距離で囁いた。
「ヤマカガシという蛇は、奥歯に毒があるんです。だから、」
そう言って一ノ瀬が大きく口を開けて首筋を食んだ。柔い肌に甘く歯を立てられ、彼の歯がきしきしと柔肉に埋まっていくその感触に肌が粟立った。けれどそれは大して長い時間ではなくて、すぐに歯が離れてゆく。うっすらと痛みが残っているその箇所を舌でべろりと舐め上げられれば、思わず濡れた唇から甘い吐息が漏れてしまう。
「ねぇ、奥歯で噛めば、あなたは私だけのものになってくれるのでしょうか」
「今更、何を言っている」
「知っていますか? ヤマカガシの毒はハブや蝮よりも強いんです。今まで食べてきたものの毒を蓄積して使用するんだそうですよ」
くすくすと笑うきれいな形をした唇が不意に自嘲気味に歪む。
「私の毒は強いですよ? 一生あなたを離しません」
それでも良いのですか? 弓なりの唇はそのままに、微塵も笑っていない目が雄弁に告げる。
真っ直ぐ覗き込まれて射すくめられて、俺は身動きひとつできなくなってしまった。けれど、答えなんてとっくに決まっている。お前が望んだのではない。俺がそう望んだのだ。
一ノ瀬の言葉に、俺は噛み付くようなキスで返事をした。
既にこの身体は、指先はおろか髪の先にまで一ノ瀬の毒が回っているに違いない。
一生離さないと言われてどうしようもなく胸が昂揚する。
こんなにも、お前が愛おしいのだから。