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あの電撃デビューから数年。今なおアイドルのトップを走り続けるST☆RISHは攻め手を緩めない。時を追うごとに更なる進化を続けている彼らに停滞という文字はないようだ。今月はST☆RISH内ユニットを組んだ一ノ瀬トキヤ氏と聖川真斗氏に話を聞いた。ST☆RISHメンバーの中でも特に落ち着いた佇まいの二人からは音楽に対する真摯な姿勢が伝わって来たが、年相応の姿も見られた。そこが彼らの魅力のひとつなのかもしれない。

――ST☆RISH同年齢ペア第二弾ということで今回初めてのユニットですが、いかがでしたか?
聖川「以前から一ノ瀬とは一緒にやってみたいと思っていたから実現できて嬉しい。良い曲を書いてもらい、歌詞も二人で考えたものなので、良いものが出来たと思っている」
一ノ瀬「そうですね、お互いのイメージを損なわず、また違った一面を出せたのではないかと思います。なんだか今までで一番しっくりきた感じがしましたね」

――今回、ミニアルバムのタイトルにもないっているCMタイアップ曲が話題になっているようですが、曲についての所見を教えてください。
一ノ瀬「表面上は雪の日に永遠を誓い合う、という歌詞なのですが、その裏には心中が暗喩されているんです。作曲家の方がそれを上手く表現してくれていて、それを感じさせないほどに軽やかで爽やかな曲になっているのですが、所々不安を煽るような音が散りばめてあって、そこを上手く表現できるように歌うのが難しかったですね」
聖川「ああ、俺も歌う時にそこを強く意識した。曲の空気感と言うか、想いが伝われば良いと思っている」

――歌詞はお二人で考えて作ったということですが。
一ノ瀬「ええ、私は曲の歌詞を考える時は、言葉の意味はもちろん、歌いやすいようにだとか、耳に残りやすいように韻を踏んだり言葉遊びのようなことを考えてしまうんです。今回は真斗さんと一緒に考えましたが、彼は俳句を嗜みますので、色々と参考にさせて頂きました」
聖川「そうだな、一ノ瀬は色々な言葉を知っていてこちらも勉強になった。時には二人で辞書を片手にああでもない、こうでもないとやっていたが、楽しかったな」

――悲しい恋を連想させるような歌詞ですが、もしかして叶わぬ恋のエピソードがあったのでしょうか?
一ノ瀬「どうでしょう?(笑) …真斗さんはどうですか?」
聖川「俺は、そうだな、叶わないと知りながら想っていたことは、ある。色々と迷っていた時期もあったが、結局一番良い形で落ち着いたと思っている」

――つまり、辛い恋をきれいな思い出に昇華できたと?
聖川「昇華、というわけではないが、まあ、近いところには」
一ノ瀬「そうだったんですか」
聖川「そういうお前はどうなのだ?」
一ノ瀬「では私も真斗さんと同じような感じということで」

――PVも話題なっていますが、なかなか刺激的なシーンがありましたよね。撮影秘話とかありますか?
聖川「……ああ、あれは(赤面)」
一ノ瀬「始めは裸で抱き合ってくれという指示でして…。次第に顔を寄せてお互いを見ろという指示が来て、最終的に、ですね」

――本当にキスしてましたよね?(笑)
一ノ瀬「しましたね。柔らかかったです(笑)監督には男同士だけど嫌悪感がないからいいねと言われましたが…褒められているんでしょうか?」
聖川「ちょうど撮影を見に来ていたメンバーに散々からかわれたな。もう二度とやらん」
一ノ瀬「そうですか? それは残念ですね」

――その噂のPVですが、限定版では未公開映像もたくさん入っているということで、見所はありますか?
一ノ瀬「メイクシーンから撮影風景、その他休憩の時の映像まで入っているので別の視点でも楽しめるのではないかと思います」
聖川「こちらとしては少し恥ずかしいのだが、ミステイクの映像もいくつか入ってるので、楽しんで頂けたらと思う」
一ノ瀬「それから、真斗さんがもう二度とやらないと言っているキスシーンのミステイクも入っています。恥ずかしがってしまって何度か撮り直しをしたんです。一発で決めてしまえばそれほど恥ずかしくなかったと思うのですが」
聖川「言うな、一ノ瀬」

――それは永久保存版ですね(笑)
一ノ瀬「ええ。それに、初回版は映像だけではなくて、フォトブックもついていますので、こちらもぜひ見て欲しいですね」
聖川「そうだな、あんなに沢山の枚数を撮られたのは久々だったな」
一ノ瀬「PV撮影と平行してジャケット撮影もやっていたのですが、カメラマンさんがとても気に入ってくれて、写真を引き伸ばしてくださったんです。折角なので部屋に飾っているのですが、真斗さんは部屋に来る度に外してくれって怒るんですよ」
聖川「当たり前だ。あの写真があると落ち着かん」
一ノ瀬「でも良い写真でしょう?」
聖川「まあ、うん、写真は良い。だが写っているのが自分ではな…」
一ノ瀬「それでは私の写真だったら飾ってくれるんですか?」
聖川「そうだな、それならば飾る」
一ノ瀬「では早速あとでカメラマンさんに写真を見繕ってもらいますね」
 
――仲が良いですね(笑)お二人がプライベートでも仲が良いのはファンの間では有名のようですが、実際よく遊んだりしているんですか?
一ノ瀬「そうですね、遊ぶというよりも一緒に過ごすことが多い、という感じでしょうか。食事を作ったり、ドラマの台本の読み合わせをしてもらったりという感じですね」
聖川「そうだな、一ノ瀬とは趣味が近いから大体同じようなものが好きだし、話も尽きない。しかし、ずっと何かを話したりしているわけではなくて、特に何かするわけでもなくお互いに静かに本を読んでいたりするな」

――他のメンバーとはそういうことはしないんですか?
一ノ瀬「しないですね、静かに本を読ませてくれないので(笑)」
聖川「全くだ。ああ、でも一十木はうちに来ると大体いつも寝ている。眠くなるそうだ」
一ノ瀬「失礼な人ですね」
聖川「まあ、それだけ安心しているのだろう」
一ノ瀬「あれは雑に扱っても問題ないので適当にあしらっておけば良いんですよ」
聖川「お前は相変わらず一十木には厳しいな」
一ノ瀬「言われる方が悪いんですよ」

――では最後に読者のみなさんに一言メッセージをお願いします
聖川「とても良いものが出来たと自負している。ぜひ聞いて欲しい」
一ノ瀬「私たちの魅力が詰まった一枚になっています。ぜひ聞いてください」


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「お疲れさまでした」
 インタビュアーが軽く頭を下げながら手元の録音機をオフにする。来月に発売される音楽雑誌でトキヤと真斗のユニットで数ページの特集を組んでもらえることになり、その対談形式の取材を受けていたのだ。
「ありがとうございました」
 ふたり揃って頭を下げる。特集記事のグラビア撮影は既に済んでいて、今日はこれで仕事は終わりだった。
 事務所からほど近いところにある出版社のロビーの一角、簡易的に区切られた個室スペースを編集の人に見送られながら出れば、エントランスのガラス越しに見える外は既に夕闇に包まれていた。表通りには多くの人が行き交う大通りがあるが、一本裏道に入れば、辺りは驚くほどに人が少ない。そこをふたりで歩いて帰ることにした。
「すみません、一本電話しても大丈夫ですか?」
 トキヤが携帯を操作しながら真斗に問う。
「ああ、構わないぞ」
 真斗の返事を聞いて、では、とトキヤは携帯を耳にあてた。
「……こんにちは。お久しぶりです、一ノ瀬です。先日はありがとうございました。……いえ、こちらこそ、あ、それでですね、先日撮影して頂いた写真を告知もかねてブログに載せたいと思っているのですが、何枚かデータを頂けたらと思いまして。……ええ、そうですね、私と真斗さんのピン一枚ずつとツーショット一枚で大丈夫です。……できれば出来るだけ大きいサイズでもらえると嬉しいです。……はい、ええ、ありがとうございます。はい、お願いします。はい、失礼します」
 ふう、と満足げな溜め息を吐いてトキヤが電話を切る。
「……さっき言っていた写真か?」
「ええ、」
「相変わらずお前はやることが早いな」
「善は急げというやつです」
 楽しみですね、と呟くトキヤは見るからに上機嫌だ。それに反して真斗の顔は暗い。
「お前は色々喋り過ぎだ」
「良いじゃないですか、ファンサービスですよ」
「ファンはそんなこと望んでいないと思うが」
「そんなことないですよ、誰と誰が仲が良いだとか、ファンは意外とそういうことにも関心があるようですよ」
「そういうものなのか」
 憮然としている真斗に、そうですよ、とトキヤが更に言葉を掛ける。そうして、ふと何かを思い出したように再びトキヤが口を開いた。
「しかし、私のことを諦めようと思っていたなんて初耳ですね」
 トキヤが隣を歩く真斗の顔を覗き込みながら言う。真斗が立ち止まらなかったら唇が触れていたかもしれないほどの近い距離だ。
「誰がお前のことだと言った?」
「えっ?」
 先ほどまでの上機嫌はどこへやら、すっ、と顔を強ばらせたトキヤに真斗はつい吹き出してしまった。
「冗談だ」
 くすくすと真斗が口元を押さえながら笑っている。よほどツボに入ったのか、なかなか笑いが止まらないらしい。
「あなたの冗談は冗談に聞こえません」
 わざとらしく頬を膨らませたトキヤを見て更に真斗が笑う。
「いい加減に笑い止まないとキスしますよ?」
 脅しのつもりで言ったというのに、真斗は狼狽えることもなく、好きにしろ、と相変わらず笑みを浮かべたままだった。
「もう二度としたくないって言ってましたが?」
「人前ではな」
 だが、ふたりきりの時なら話は別だ、と真斗が内緒話をするように小さく呟く。だから早く家に帰ろう、と手を引く真斗の手を握り返してトキヤは足早に歩き始めた。
 翌日、トキヤがいつにも増して上機嫌だったことは言うまでもない。